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1997年2月28日にリリースされたPSゲーム『クーロンズゲート』──
今年2022年でリリース25周年を迎えます。この25年、実に四半世紀、あらゆることが変わりました。
25年間の「変化と進化」、そのテーマを掲げて、蓜島邦明氏によるプリベートスタジオライブを開催。
クーロンズゲート続編新作として制作が進む『クーロンズリゾーム』向けに書き下ろした新曲2曲が演奏されました。

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鳴力(ミンリー)とは双子が互いに響き合う現象をいう。

それは風水なき陰界に風水をもたらす龍脈の到来の前兆とされている。
神秘性を感じさせるイントロから始まるこの曲は、定格思念を連想させるリズムが立ち上がり、

祝祭性を備えた儀礼的な荘厳さを感じさせるパートへと展開していく。

遠い時空の彼方から巡りくる思念との合一を予感させる。

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異なるプロトコルによるネットワークが影響しあうことで時空に乱れが生じる。この現象をシンクロスという。

さまざまな通信が集中する「輻輳(ふくそう)」に近い。
鋭く立ち上がる電子的な世界観が全編に通底して行く中で、そこに絡め取られる思念が舞い踊るような躍動感が窺える。清濁飲み込んで縦横無尽に錯綜する様子は、単なるカオスを超えた調律的な世界観を想起させる。

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クーロン発売25周年として、この四半世紀の「変化と進化」というテーマでスタジオライブを収録しました。
収録後、蓜島邦明氏にインタビューを行いました。

 

話し手:蓜島邦明 クーロンズリゾーム サウンドコンポーザー
聞き手:木村央志 クーロンズリゾーム ゲームデザイナー/シナリオライター

木村:
今回、お披露目いただいたのは、「楽曲:S」「楽曲:M」の2曲です。
それぞれに僕の方で『鳴力(ミンリー)』『シンクロス~輻輳~』と曲名を付けました。
​ところで最初にお願いしたのは昨年の3月頃です。ゲームの試作版ダンジョン制作中で、まだ設定とシナリオしかない状態でした。

蓜島:
ゲーム設定をうかがっていて、前作に比べて世界観が広がっているというか、九龍城だけ見ていればいいといわけではなかったので、はじめは戸惑いました。

木村:
それでもグイグイ入ってくる曲に仕上がっていますね。例えば『鳴力』ですが、とても宗教的な感じがします。

蓜島:
そうなんですよ、あの曲は儀式なんです、テーマは。特に木村さんから細かな説明を受けたわけではなかったのですが、ふと浮かんだわけです、儀式というテーマが。

木村:
「楽曲:S」を最初に聴いて、ああ、これは『鳴力』しかない、と曲名は即決でした。『シンクロス~輻輳~』のほうは、電子的な印象がカットインで入ってきます。

蓜島:
これも最初からネットワークといったデジタルな主題があったわけではないのですが、曲作った後、木村さんから送ってもらったレビューを読んで、自分の中でイメージが「ああそうか!」と合致した感じですね。

木村:
前作のときもそうですが、蓜島さんとは細かな下打ち合わせはほとんどなくて、なんかこう以心伝心の存在を感じますね。ゲームリリースに先立って提供できるサントラに収めてある『暗い情念』なんかもそうですよね。

蓜島:
今作ではナチスドイツとかも絡んでくると聞いて、どう繋げようか悩みました。それで九龍城とはまったく違うスタンスで作ったわけです。

木村:
馬のいななきのエフェクトがいい感じで入っていたりして、ヨーロッパ的な世界観でドイツの山深い古城がまぶたに浮かんできました。古城というのは設定にあるのですが蓜島さんには一言も話してはいませんね。

蓜島:
はい、聞いていません。やはり何かあるのでしょね──今回、九龍城から遠くまで離れていって、また原点回帰したところで作った曲もあります。そこには前作のモチーフを使ったりしています。

木村:
今作は「思念」がテーマですから、時空を超える軽さがあるわけです。でもその足元には陰界の九龍城がしっかりとあって、起転結というか序破急で構成すると、最後には九龍モチーフの曲で落とすということも可能ですね。

蓜島:
ゲーム後半に使える曲とかもあると思います。まだ曲のストックはたくさんあるので、またこうしたライブを開催したいですね。

木村:
前作と今作をつなぐような構成、つまりはミッシングリンクを作るようなコンセプトですね。
今日は、スタジオライブ、お疲れさまでした。また貴重なお写真も預かり、ありがとうございました。
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2022年2月17日(木)

​蓜島邦明プライベートスタジオにて

スタジオ片隅に置かれたテルミンと2ショットの蓜島さん。

後記にかえて:
蓜島さんのスタジオを訪問するたびに感じ入ることがある。よくもまぁ、この陽の気に満ち満ちたスタジオで、陰界のサウンドスケープを描けるものだと。いやしかし、それがプロというものだろう。今回、蓜島さんの若き頃、ちょうど50年近く前の写真もお借りして動画に取り込んでみた。なんだか四半世紀が二つ折りに重なって時代に一層の厚みを加えているようだ。そして次の四半世紀を経たとき、香港に保証されている「一国二制度」が終わりを告げることになる。

木村央志

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