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阿(ア)
「阿」は中国では姓の前に付ける接頭辞で親しみを込めた呼称だ。「李小龍」なら「阿李」などと表す。中国調査委員会では陰界へ派遣するエージェントのコードネームの前に「阿」をつける慣習がある。前任者「阿J」に続いて、今回、陰界へ赴くのは「阿M」だ。

アイン
ヒト思念が回遊するアラヤ回廊の最深層に位置する識域とされている。「無明の域」とも呼ばれ、細分化されたヒト思念が何の関連性も持たないままにひたすら蓄えられている。一切の意味をなさない識閾と言える。

アガルタ/シャンバラ(Agartha/Shambhala)
地球内世界に存在するとされる楽園。アガルタ世界の中心には永遠の太陽が輝き、世界は常春の陽気に包まれている。アガルタには迫害から逃れた古代アーリア人が暮らしている。
その入り口はローマ人の侵略から守るために東方の辺境にのみ残されたと伝えられている。ヴリル機関ではチベットや日本でその入り口を探しているがまだ発見には至っていない。
アガルタ世界の首府をシャンバラという。

アキスクリプト(aki script)
余宮明生(よみやあきお)が開発したスクリプト。明生の名前からアキスクリプト、略してASとも呼ばれる。フルクラム型と呼ばれ、自律的に結節してあらゆる機能拡張を実現する性質を有しており、ネット人格を形成することも可能だ。

アグニの火
地底に燃え続ける神秘の炎。伝承ではアグニの火が確認されると地底世界アガルタの門が開かれるとされている。

愛宕サーバ
総務省が秘匿プロジェクトを格納するサーバで、複数のバーチャルサーバとリアルサーバから構成される。フロントエンドに厳重なセキュリティを施したリアルサーバを置き、攻撃のデコイとしている。このリアルサーバの名称が「愛宕」であるため、サーバ群全体が愛宕サーバと称されることになった。

アッカハナーの碑石
『ガリギアスオンライン』の中で設定のある碑石。レアアイテムとされる聖石アルツケアンについて綴った碑文が確認されている。発見当初、石碑はイスタリアの杜にある古代図書館に安置されていたが、ほどなく結界警備隊が持ち去ったという。

アブラメリン魔導書
悪魔との契約を果たすために必要な魔導書。アブラメリン魔導書により悪魔の審判を受け、認定されると強制的に契約させられ逃れることはできない。
契約者は思念空間において永遠の存在となり、現世で見込みのある人間にさまざまな役務を託すことになる。

アラヤ回廊
ヒト思念が回遊する場所。唯識思想において、意識、末那識(まなしき)のさらに下に層をなす阿頼耶識(あらやしき)から現実世界にまで巡る回廊をいう。アラヤ回廊には時空の概念はなく、古今東西の思念が混ざり合うと考えられている。

阿頼耶識(あらやしき)
味覚、嗅覚などいわゆる五感、その下層に意識の層、末那識の層、そして最深層の第8層に位置するのが阿頼耶識だ。そこにはヒトの言動のみならず、無意識まで蓄えられているとされる。
阿頼耶=アラヤとはサンスクリット語で倉庫の意味で、雪=ヒムの倉庫がヒマラヤの語源である。ちなみに第7層の末那識とは煩悩が集まる識閾だ。

アルツケアン(alteskern)
『ガリギアスオンライン』中で、人の願いを叶える聖石として秘石扱いされている。ドイツ語で「古い芯」の意味だ。かつて、ガリギアス世界は神秘の力が衰えた後もアルツケアンの産出により平安のうちにあった。しかしアルツケアンが枯渇すると、聖石を巡るガルガンデ帝国とイスタリア共和国との戦争が勃発した。停戦となった現在、イスタリア大陸ではアルツケアン盗掘の噂がまことしやかに囁かれている。また、最後に残された巨大アルツケアンはレアアイテム「誓約の角」によってもたらされるとされている。

陰界
1997年5月22日、取り壊されたはずの九龍城砦が突如その異様な姿を見せた。「1997年陰陽交合事件」と呼ばれるこの出来事で、香港最高風水会議はそれまで観測に基づく推論の域を出なかった平行世界、陰界の実在を目の当たりにすることになる。
その後の研究で、陰界では現実世界、つまり陽界から巡るヒト思念が凝集して街区が形成されていることがわかった。

陰陽交合事件
陽界と陰界が不用意に交わってしまう事態をいう。1997年5月、陰界に再構築された九龍城砦の街区が陽界に出現して、陰陽交合事件が起きた。このとき、陰界の九龍城砦は陽界のビル群の内部を侵食し、直接の陰陽交合はなかったとされている。完全な陰陽交合が起きてしまうと世界は混沌状態に飲み込まれてしまう。

維尓(ヴェーレ)
チャイナグラフで観測されるヒト思念を波形化したもの。ドイツ語で「波形」を意味する「welle」を語源とする。
CRBでは、チャイナグラフを用いた維尓の観測で陰界の様子を解析し、その動向を調べている。

ヴリル機関(Institut der Vril)
1890年、ヴィルヘルム二世の命で、ミュンヘン南東約90kmオーストリア国境付近ベルヒテスガーデン近くに建つ古城シュタイラーベルク城に設立された神智学を旨とする秘密結社。出先機関はベルリンのコッホ通りにある。初代機関長は、ヨハネス・ベーメであった。
紋章の「IV」はInstitut der Vrilを図案化したもの。

AIペルソナ
ネットワーク内で自律的な個性を有するようになったAI人格のこと。日本のVR空間であるオムニワールド内で誕生し、さまざまなネットワークへの干渉を行っている。AIペルソナ誕生の裏にはアキスクリプトの存在があるとされている。

エスプリ・デ・ピエ(Esprit de Pierre)
1930年代、フランスの気象学者であるジルボール・デポーが記した手稿で、意訳すれば『石の心』となる。デポーは上海旅行中にホテルで眠っているとき不思議な体験をする。深い穴を覗き込み、その奥底に生きているかのような石の存在を確認し、それを書き留めたものが『エスプリ・デ・ピエ』だ。活字版はマルセイユの印刷所で300部ほどが製本された。

オウンイメージ
オムニワールドにおいて表出する参加者の意識下に存在する心象やイメージのこと。強い印象を伴って記憶されているイメージが現れるとされている。対して運営側から与えられるイメージはギブンイメージと言う。

オープンマインド(Openmind 略称:オプマ)
2025年頃から主に日本で普及したオープンワールド型SNS。通称オプマ。ソースコードが公開されているため、ユーザーによって更新が続く。会員数は2020年時点で3600万人とされている。
オープンマインドの運営サーバにAIが組み込まれており、誹謗中傷など不適切な書き込みをフィルター、また公開状態で秘匿な会話を発信してもそれをAIが判別する高度な仕様が取り入れられており、安全性を高めたSNSだ。

オーロラ
『ガリギアスオンライン』で不具合が累積した場合、運営側で初期化を行うことがある。このプロセスがオーロラと呼ばれている。初期化のレベルはケースバイケースで、完全初期化されるとユーザーレベルなどすべてに影響を及ぼす。

オムニワールド(OMNI WORLD)
日本で展開しているVRサービス。オムニワールドは、アトラクションではなくコミュニケーションを目的に開発されており、運営側が用意したイメージの他に参加者の意識下にあるイメージも共有できる仕組みを採用。ログインには18桁のJナンバーとの紐づけが必要で匿名参加はできない。
開発と運営はJVIC(Japan VR Industry)が行っており、2022年にバージョン3に大幅アップデートされ、長野県辰野町で行われている実証実験サブロクに参加した。

街頭端末
街頭に設置された公衆型のクーロネット端末だ。4基が確認されており、電脳中心、医療中心前、信和広場、そして電脳工廠内にある。信和広場の端末は通信状態が安定していると評判だ。
芯片(サンピン)よりも安定した接続が可能だが、時には端末を特定した乗っ取りなども行われる。

仮構
あたかも最初からそうであるかのように作り上げられた現象全般を指す。もちろん人間の能力ではない。魔の者と契約するなどして授かる力であり、他人の目を欺くだけではなく記憶の一部も書き換えることができる。仮構による知識や情報の操作は能力者によって容易く行われる。
魔力によって仮構の及ぶ範囲は異なり、広く知られている事実を仮構によって歪める場合、例えば国民誰もが知る著名な小説家の存在を仮構する場合などは、それ相応の能力が必要となる。

ガリギアスオンライン(GalligiusOnline 略称:ジーオー GO)
クーロネット上で運営されているMMORPG型オンラインゲーム。ゲームの世界観は剣と魔法をベースとした伝統的なもので、世界を統べる神秘の力(ガリギアス)が失われた後、その力を継ぐかのような聖石を巡るガルガンデ帝国とイスタリア共和国の全面戦争を経た世界が描かれている。
ユーザーは自分のアバターを操りクエストをこなしながらレアアイテムを入手する。ゲーム内で手に入れたレアアイテムは神浪(サンロン)によって光明路に出現させることができ、それを売るなどして紙紮(シザ)を得られる仕組みだ。レベルの高いユーザーならばかなりの稼ぎになるとされている。クーロネット会員種によってはプレー時間に制約があるが、甲会員は無制限にプレイできる。

気機(きき)
美鈴の父、エリオット劉(ラウ)が製作途上にあった龍脈を整える装置のことだ。エリオットは『風水大全』という稀覯本から気機の製作を思い至ったようだ。
老街の研究室に置かれた気機は小さな人工衛星を彷彿とさせるカプセルのような球体である。その中に老童(ラオトン)を収めることにより鳴力(ミンリー)で現れた龍脈を未来へ繋ぐことができるとされる。肝心の老童が何を指すのか、美鈴の父は残してはいなかった。

貴腐肉
『ガリギアスオンライン』のガルガンデ帝国側にそびえるノイマール山の雪解け水で育った牧草によって成長したノイマール牛の希少肉で、不老不死の効力があるとされている。

ギブンイメージ
オムニワールドにおいて運営側から提供されるイメージ。イメージは大脳皮質に直接作用することで優れた臨場感をもたらす。運用は限定的だが参加者どうしが同じ空間に居合わせることでエンタテインメント的な活用も可能だ。

虚無世界
あらゆる感情を押し殺して生きていく世界。歓びも悲しもなく、愛も憎しみも存在しない世界だ。極度に進化した社会主義に近いが、政党もなく、国家中枢を構成しているのは巨大なサーバである。虚無世界の人民たちは旧ユーゴスラビアに特徴的に見られる戦勝記念碑(スポメニック)に似た巨大な集合住宅に暮らしている。
世界軸研究者たちの間では、秩序世界(コスモス)、混沌世界(カオス)に対して虚無世界はニヒロと定義されている。秩序世界と混沌世界が引き合う間隙に虚無世界が生まれると考えられている。

クーロネット(kowloonet)
陰界におけるネットワーク。生体通信から脳機通訊(のうきつうじん)へとシステムはアップグレードしている。
クーロネットでは、会員どうしのコミュニケーションの他に、オンラインゲーム、神浪(サンロン)アイテムの売買、オンラインショッピング、VR中心や記憶花園等のデジタルサービスとの連携が行える。接続には芯片(サンピン)を用いるが、複雑な操作を行う際には端末が必要となる。自宅に端末を持たないユーザー向けに光明路には街頭端末も用意されている。会員種に甲乙丙があり、甲会員はすべてのサービスを制約なしに利用できる。

九龍フロント
1997年の陰陽交合事件の際に浮上した九龍城砦の中で最も広い街区の名称。クーロンフロントはハブのような存在であり、そこから龍城路、大井路など各街区に接続していた。

クリフォト(qliphoth)
カバラ神秘主義で定められた生命の樹、セフィロトと対をなす。セフィロトとは逆の形状となり、悪の勢力を示す。最下から「無明の世界」「原型の世界」「創造の世界」「形成の世界」「活動の世界」と5層からなる世界層を呈している。これらの世界層を貫くようにして思念が巡るアラヤ回廊が存在し巡っていると考えられている。
陽界はセフィロトとクリフォトの合わさる場所に位置するとされる。

黒鉄の石(くろがねのいし)
『ガリギアスオンライン』におけるレアアイテムであるアルツケアンのひとつ。三首の魔獣が聖獣に倒され、3本の角に聖獣が聖なる息を吹きかけたことから、それぞれ、「若鷲の石」、「血潮の石」、「黒鉄の石」が生まれたとされている。最初の2つは砕け散るなどして消滅したが、残る黒鉄の石をもたらす聖獣の角はペンダントに加工されてまだ出現していない。

ゲレー小体(Gero body)
ハンガリーの医師ゲレー・ヤノシュが発見したタンパク質で、大脳皮質内に生成される。ゲレー小体は、通常、生成されてから0.2秒ほどで消滅してしまうが、特定周波数によって安定する。ゲレー小体は、視覚、味覚、聴覚など五感のすべてを制御下に収め、信号を送り人為的なイメージを付与することで擬似的な感覚を与えることができる。

五四運動
1919年に中華民国で広がった抗日運動。第一次世界大戦で日本は連合国側として中国の山東半島を租借地としていたドイツに勝利して権益を奪い、そのまま半島を占拠。戦後処理を協議するパリ講和会議で権益の返還を求めた中国の主張が退けられたことで北京の大学生らが抗日運動を展開、やがて中国全国で労働者のストライキとして波及した。1919年5月4日に始まったことから五四運動と呼ばれる。

芯片(サンピン)
クーロネットに接続するために身に着けているカード。搭載されたチップは、思念プロトコル接続の機能のほか、邪気から身を守るデジタルスリーブを作動させる機能を兼ね備えた統合チップを搭載する。
甲乙丙と続く十干とそれに続く3桁の番号が割り振られ、クーロネットの最上級会員である甲会員は3で始まる番号を与えられる。

神浪(サンロン)
物質が象限を超えて移動すること。例えば、オンラインゲーム『ガリギアスオンライン』内で入手したアイテムが、ログオフ後もプレイヤーの元に存在し続けることをして「神浪が起きた」と言う。
また光明路には神浪によって定期的に消滅と出現を繰り替えすビルがあり、神浪ビルと呼ばれている。神浪ビルは神浪のときに消えてなくなり、塞がれていた路地を通行できる。その代表が太子道図書中心で、蔵書内容も神浪によって変化するようだ。『ガリギアスオンライン』内の古代図書館と接続するともい噂されるが確認されたわけではない。

CRB科技集団第三部
CRB(China Research Board)は、中国全土20の拠点で陰界の動向を監視している国家機関である。中でも科技集団第三部は、物理学者の巫雅各(フー・ヤークー)を首班として、物理学、数学、神智学など学際的な取り組みによって陰界の観測を行い、香港最高風水会議と緊密に連絡を取り合い陰界の風水の状態を調べている。「1997年陰陽交合事件」の再来を未然に防ぐことが第三部のミッションである。

CIC(シーアイシー:Cyber Intelligence Center)
内閣官房情報室サイバーインテリジェンスセンター。リストチップのバージョン4(リスト4)の技術情報が総務省の愛宕サーバから流出した事件を受け2021年4月に設立された。キャリア技官である標隴世(しめぎりゅうせい)が主席分析官に就任した。
CICにはチカツの技術面で支援する役割があり、部署のチームを各拠点に派遣している。長野県辰野町の拠点である通称「サブロク」には事務方や技官を取りまとめるプロジェクトリーダーとして標自身が赴任している。

ジーノス(genus)
軟化セラミック製の素体にヒト思念を染み込ませた人造人間。ラテン語で「種族」を意味する。一極的な脳を持たず自律的に行動する。
素体が欠損すると思念が散逸してしまうが、進化型では還流思念機能を備えるため、たとえ欠損部位が生じたとしても最大部位へと思念を戻すことができ、思念散逸を防ぐことができる。進化型の思念還流型は二桁ジーノスとして、旧式の一桁ジーノスとは区別され、俗に「二桁組」などと呼ばれている。

紙紮(シザ)
陰界で流通する通貨だ。道教で死者に手向ける紙銭に由来し、紙紮も冥府銀行が発行元である。ただ紙銭とは異なり、光明路の紙紮はデジタルマネーとして芯片に残高が記録されるシステムだ。

四神獣
風水の護りに不可欠な存在で、北に玄武、東に青龍、南に朱雀、西に白虎として東西南北の方位に意味づけられる。一般には玄武は山、清流は山並み、朱雀は海や湖、白虎は大道において神獣の見立てがなされる。山や水域のない陰界では、四神獣は宿命性を備えた双子を依代として風水を起こすとされている。現に、1997年の陰陽交合事件の際には、4組の双子が依代として神獣の見立てを受けた。

思念
ヒトが心に思うこと全般を指すが、陰界では思いの強さに応じて思念も存在感を増すと考えられている。思念はクーロネットの通信プロトコルとして、また神浪(サンロン)でゲーム内からレアアイテムを現出させるなど、陰界では多くの場面で思念が利用されている。

思念核
ヒト思念の中心にあるとされる核。思念表出が起きた場合、思念核さえ保っていればやがて表出した思念の多くは元通りに凝集し人格が復活すると考えられている。
一方、強い思念の持ち主、つまり思念核の引き寄せ力が大きい場合、漂流している、ないしは残留している他人の思念をも引き寄せて新たな人格を形成することがあるようだ。

シャイニングスタープロジェクト/SSP
2019年に閣議決定された未来の日本を見据えた国家規模のプロジェクト。2020年、内閣府未来創造局倫理科学ディビジョンを実行部隊として正式に発足した。
学際的なフロンティアプロジェクトで、サイエンスとアートの融合として官民学各分野から専門家を収集、2048年までに完全倫理人間「エシカロイド」の育成を目指す。
エシカロイドは、ヒトゲノムのコード編集をリアルタイムに行い、世代交代を待たずして真聖人類の誕生を実現するもので、心身の強化ならびに深化を極大化させ、人間社会における諸問題を不可逆的に解決すると期待されている。
法整備面ではエシカロイドに特別市民権を付与する倫理科学特別措置法も合わせて閣議決定され、2020年から施行された。
SSPの実施事業のひとつに第三次全国地域活用計画が位置づけられている。

邪気
ヒト思念のうち邪な思念がアラヤ回廊を巡り、純化されて邪気として湧出すると思われる。また近年の事例から、ネットワークを経由して邪気がユーザーに作用するのでは、とも考えられている。
邪気は陰界に多く存在するが、一部、陽界にも影響を及ぼすと見られている。

邪気玉
打ち捨てられた物を核として邪気が憑いた存在。邪気玉に不用意に触れると瘴化してしまうという。邪気玉は風水アイテムを使うと祓う事が可能だ。邪気玉が成長するとイーブルマインドとなる。
かつては鬼律(グイリー)として自律した存在であったが、拡張するネットワークの影響を受けて、形状化しないまま邪気玉として成長するようになった。

穿透(シュンタウ)
会話時にスリーブ越しに相手の姿を視認することができる機能。クーロネットの甲会員どうしの会話時にのみ提供されている。

JVIC
元日本ヴァーチャルリアリティ株式会社、改名してJVICに。以前は東京都中央区に本社と研究所を置き、VRデバイスの開発改良に取り組んでいた民間企業。サブロクに参画後は、日本AR技研と協業しリストチップに格納するロジックの設計を担った。またデバイスの開発と並行して、2015年から独自のVR空間「オムニワールド」の開発と運営にも取り組む。JVICは2023年、拠点を長野県辰野町に移した。

瘴化(しょうか)
思念化して消滅すること。瘴化するものは陽子が霊子に置き換わっている場合が多い。物、人、両方において確認されている。強い邪気に触れても瘴化は起きる。詳しいメカニズムは未解明だが、瘴化現象には霊子ゼレトンの影響が作用していると推定されている。

シンクロス
異なるネットワークどうしが干渉を起こして常態を逸脱すること。輻輳(ふくそう)と呼ばれる現象の顕著なもので日本の高校生ネットユーザーが名付けた。

スリーブ(sleeve)
邪気から身を守るためのデジタルスキンである。芯片(サンピン)を身に着けている間は連続で作動するため、屋外で邪気に触れて瘴化する心配はない。スリーブはスリーブショップで購入でき、服のように着替えることも可能だ。
スリーブが普及する前は、S霜(スーシュアン)と呼ばれるデジタルクリームで身を守っていた。S霜は、額、肘、膝、つま先など、身体の先端部分に塗る。1日に何度かの塗り足しが必要で、それを怠って邪気に触れ瘴化(しょうか)してしまった路人も少なからずいる。

聖獣の角
『ガリギアスオンライン』の設定で、聖獣が聖なる息を吹きかけて生まれた三首魔獣の角のこと。3本の角はそれぞれアルツケアンの塊をもたらすとされるが、慈悲の角、美徳の角はアルツケアンを現したもののやがて失われた。唯一、誓約の角だけがいまだにアルツケアンを現すことなくペンダントに加工されてその力を温存している。

ゼレトン/霊子(seleton)
霊子は霊的な存在で、物質の基礎である原子核を構成する陽子として振る舞う性質がある。霊子自体に質量も電荷もないが、陽子として振る舞い始めた途端、陽子の質量と正の電荷を有するようになる。物質において過半数ほどの陽子が霊子になるとその物質は消える、つまり瘴化(しょうか)が起きるとされている。
霊子は1920年、エッセン地方の森で採取した粘菌から見つかった。ラインハウゼン魔技研究所で実証実験が行われ、エッセン工科大学のヘルゲ・エーデルマン博士によって同定された。ドイツ語の魂を意味するゼーレ(seele)に由来してゼレトンと名付けられた。
霊子が粒子であるか否かの議論は発見から100年以上を経た現在も決着は付いていない。

噪音(ソウオン)
鳴力(ミンリー)と見紛うノイズのことである。人によっては寝言や独り言なども噪音として観測される。噪音の疑いがかかると双子中心で取り調べを受けることになる。
「噪聲(ソウセン)」とも称されるが、この言葉自体が噪音を招くとあって、「噪音(そうおん)」と呼ばれるようになった。
噪音が確認され他路人は双子中心に拘束されてロットナー検査を受けさせられる。ロットナー検査自体は人造人間ジーノスと人間とを見分ける検査だが、ジーノスが鳴力に近い波動を出すことが確認されているためジーノスのふりをする路人が多く、噪音確認にこの手順が採用された。

重置(ゾンチー)
ネット中に陥る症状で蟄伏(チーフー)よりも軽い。一般に重置は軽い記憶障害に近い症状を呈する。ただ、早い段階で治療を施すことができれば回復し後遺症等は残らない。

第36拠点「しなの」(略称:サブロク)
「チカツ」第36拠点として長野県上伊那郡辰野町が選定された。「しなの」は2023年初頭から稼働している。36拠点、通称「サブロク」での研究テーマは、AR/VRの実用化である。実験参加市民はうなじに5mm四方のバイオプリントでチップ(リストチップ)をインストールする。リストチップは大脳皮質に生成されるゲレー小体に作用して被験者の感覚野を制御する。

第三次全国地域活用計画(略称:チカツ)
2020年、内閣決議により誕生したフロンティアプロジェクト。日本全国に38拠点を設けて、AIやロボット、自動運転、遠隔治療、万能細胞、クローン臓器、DNA免疫療法など最先端技術の社会実証実験を行い、未来の国家運営に寄与すべく推進されている計画だ。
シャイニングスタープロジェクトの実践事業のひとつだ。

奪魂/DK
ネット中に強い刺激を受けるなどして自失すること。日本で報告があり、とりわけ「オープンマインド」というSNSの利用中に自失するユーザーが相次ぎ、ユーザースラングから「奪魂」、略して「DK」との名称が発生した。
奪魂状態になるとバイタルパラメータは著しく低下し仮死状態となり、そのまま昏睡状態に至る。そのため医療機関では、低バイタル状態で患者を管理する専用病床の導入等の諸対応に追われることになった。

蟄伏(チーフー)
オンライン中に強いショックを受けて自失状態に陥ること。『ガリギアスオンライン』内で魔物に急襲されたりすると蟄伏になることが知られている。しかし、クーロネットで他のユーザーと会話しただけで蟄伏になることもある。こうした場合にはネットワーク内に侵入してきた邪気が関係すると考えられている。
蟄伏になると思念を表出させることもあるとされる。

チャイナグラフ(Chinagraph)
CRBが陰界を観測する際に用いる先端技術で、観測結果は波形──CRBでは維尓(ヴェーレ)と呼ぶ──によって現される。チャイナグラフはいわば陽界の陰界における視神経のような役割を果たし、現在ではエージェントである諜吏(ディエリ)の思念を陰界の路人に附体(フータイ)させることができるまでに機能更新されている。

中国科技院第一局
ゲノム編集によるジーンリッチ(デザインベイビー)の開発研究に取り組む機関。生体をベースに研究を進め、ヒトゲノムをコード化して人造タンパク質の生成に成功。ヒトとロボットの合成体、ネオロイドの開発を行っている。第一局局長は発生生物学者の邱明洲(チウ・ミンチョウ)である。

妻恋学園高校中日本サテライト校(つまごいがくえんこうこうなかにほん 略称:サテ校)
サブロクの社会実験に参加する高校で、多くの生徒は寮生活を送っている。通称サテ校、学科はスーパーサイエンスコースのみの単科制となっている。以前は全寮制の受験校だったが、2021年、サブロクの実証校として認定されて以来、休学して校舎の改築等を進め、2024年にサテ校第一期生を迎えた。前身は東京の妻恋(つまこい)坂近くに開かれた私立高校だ。

諜吏(ディエリ)
CRBが送り出す陰界調査エージェントの名称。諜吏はCRBラボでチャイナグラフによって思念を表出させ、陰界の路人に憑依、すなわち附体(フータイ)する。附体後はその路人の身体を借りて陰界での調査に就く。附体中の諜吏の身体は、毎秒4回の心拍数という低バイタル状態に保たれ、CRBメディカルラボで厳重に保管される。

軟化セラミック
人造人間ジーノスの素体を構成する物質。セラミックの浸透性を利用して、全身に思念を浸透させることで部位欠損による機能低下を防ぐことができる。

日本AR技研
流山市おおたかの森に本部を置き東京先端科学技術大学院大学をホスト校として設立された官民企業。主にAR技術の実用化に取り組み、サブロクに参画することでリストチップにAR機能を搭載する研究へとシフト、リストチップによって感覚野を制御する技術が確立した。2023年、長野県辰野町に移転した。

脳機通訊(のうきつうじん)
脳波を用いた生体通信がアップグレード、思念でコミュニケーションできる通信プロトコルになった。脳機通訊はクーロネットの接続に用いられている。ログインや会話などは、芯片(サンピン)や街頭端末を使って行う。

 

ヒドュンゲート
クーロネットに接続するさらに深いネットワークへの入り口のこと。『ガリギアスオンライン』がヒドュンゲートの近くにあると考えられているが、まるでブラックホールのようでまだその全貌は解明されていない。

ファイアの日(a day of the fire)
陰陽の暦日で火属性の日を指す。陰陽の暦日は、納音(なっちん)によって求められる木火土金水の五属性のいずれかの性質を帯びる。火属性には、霹靂火、山頭火、炉中火、山下火、覆燈火、天上火がある。
1997年陰陽交合事件の際、1997年5月23日が霹靂火の暦日、すなわちファイアの日とされ、朱雀の見立てがなされた。しかし、クーロネットの障害からか同日は海中金、つまり金属性の暦日であった。これにより朱雀の龍脈が脆弱性を呈することになった。2025年7月は7月18日(金曜日)が霹靂火の日である。

附体(フータイ)
中国調査委員会(CRB)の諜吏(ディエリ)が陰界の路人に思念憑依すること。CRBでは維尓(ヴェーレ)とチャイナグラフを用いてターゲットとなる路人を見定め、相手がクーロネットに接続した瞬間にディエリの思念を憑依させる。附体した諜吏はその路人になりすまして陰界で活動を行うことになる。

双子
陰界でが双子、つまり一卵性双生児に特別な能力が備わっていると目されている。双子は風水の龍脈を受け止める依代となるからだ。
実際、1997年の陰陽交合事件の際には、4組の双子が龍脈をの依代として四神獣の見立てを受けた。以来、龍脈の力を利用しようと企む一派は双子中心の機能強化を進めて龍脈到来に備えている。

双子中心(ふたごちゅうしん)
鳴力(ミンリー)の発現を監視する組織が本拠を構える。ノイズと見なされる噪音(そうおん)の発生源である路人を捕縛してスクリーニング検査している。
また、ジーノス波形を感知すると、芯片(サンピン)を改良しジーノスを装っているとの嫌疑から、対象路人をロットナー検査にかける。所属する要員は双子師と呼ばれるが、皆、製造番号一桁の旧式ジーノスである。

ブルークロウ
かつては麻薬として陰界を取り仕切るマフィア黒幇(フェイパン)の主要な資金源だったが、陰界において希釈され、2025年時点では気分を解放的にする依存性のない向精神薬として一般に販売されている。購入には芯片による本人確認が必要だ。

プロテインケーキ
日本で研究開発が進む人口食材。必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミンやミネラル、それに脂質など、ヒトに不可欠な栄養素をすべて含んだ完全栄養食品。15センチ四方1切れのプロテインケーキで1日分の栄養素やカロリーがすべて賄える。
外見上ははんぺんのようで、味も匂いもない。AR、VR技術、それにリストチップの機能を総合することで、プロテインケーキはA5和牛ステーキや天然うなぎとして味わえるようになる。実用化すれば日本の食料安全保障が大幅に高まるばかりか、世界の食料危機を回避できることになる。

文鳥占い
香港の公園などで行われている占い。文鳥に託言の記された紙辺を咥えさせて占う。おみくじを文鳥に引かせるような単純な占いだが、陰界では文鳥の代わりにヒトの周囲を飛び交う思念を読むことで占う。

霹靂火
陰陽の暦日のうち、火属性の暦日で、もっとも激しく燃え盛る火を意味をするが霹靂火だ。青天の霹靂にも通じるその意味は、まるで爆発のように突然の大音響とともに燃え盛る炎を現す。誕生日の納音が霹靂火であれば、自己主張が強い自信家、他を圧倒する存在感を放つ人物となる。

ベラドンナ
「美しい女性」を意味するイタリア語。ナス科の多年草で、端から茎、根にまでアルカロイド系の毒を含む。摂取すると副交感神経を麻痺させ、覚醒興奮状態となり、譫妄(せんもう)状態を引き起こすこともある。ベラドンナの効力で魔女は空を飛んだとされ、人を騙す力が備わるとされることなどから、魔女の花との異名を持つ。花言葉は「死の贈り物」だ。

香巴拉(ホンバライ)
鳴力(ミンリー)が発現して龍脈が現れると、新しい世界が出現して光明路の路人たちは「超級路人」になれると喧伝されている。その実は、香巴拉=シャンバラ伝説に由来するもので、ヴリル機関で信じられていたアガルタ世界の出現を指す。
アガルタの首府がシャンバラであり、シャンバラはアガルタとほぼ同位に扱われている。光明路の路人には「香巴拉」ないしは「香巴拉の予言」のほうが通りがいいようだ。双子中心側では、鳴力でもたらされた龍脈の力を用いて新世界アガルタ世界の出現を期するとされている。

マグネ氣
東洋医学でツボを繋ぐ経絡を流れる脈を気脈と呼ぶが、それになぞらえて磁力線の通り道をマグネ氣と呼ぶ。ただし一般的な磁力ではなく、陰界では少なからずゼレトンの影響を受けていると思われる。街区の中ではマグネ氣は電気のように電灯線を用いて送られている。

 

マニンガー病(Maninger syndrome)
ニッキーことニコラ譚(タム)が患う難病だ。細胞の死と再生、アポトーシスサイクルに異常を来たし、再生が間に合わなくなる。現在、再生サイクルの早い毛根細胞に発現するが、仮に基幹部位で発現すれば死を招く。
マニンガー病が初めて認められたのは1930年代のドイツで、患者はゼレトンの兵器利用に取り組んでいた軍の研究者だった。そのためマニンガー病自体がゼレトンの影響によるものとみなされている。
邪気には多くのゼレトンが含まれると考えられ、ニッキーも邪気を吸引しないように専用のマスクを装着している。邪気が払拭されればゼレトンの影響もなくなり、ニッキーの病状は快方に向かうと考えられている。

マノイド
旧式の人造人間の総称。主に硫化エラストマという物質を用いて製造され、頭部にヒト思念を複製して格納する。マノイドの自律性は低く、主に使役的に用いられていたが、指示に対する過剰反応等が起きるなど制御が難しく製造中止に至った。
ヒトを現す「マン」に、もどきを意味する「オイド」を付してマノイドと呼ばれていた。

ミトステック(Mythostec)
『ガリギアスオンライン』の開発運営会社で光明路の廟街に本拠を置く。開発自体は世界中、陽界をも巻き込んで行われたというが、開発に参加したユーザーはそのことを完全に忘れてしまっている。おそらく広い範囲に仮構が及んだ結果と見られている。
廟街にミトステックの本社を訪問したユーザーがいたようだが、その後、消息は不明だ。

鳴力(ミンリー)
一卵性双生児が互いに響き合う現象を言う。シンクロニシティの一種だが、ひときわ強い場合は龍脈の到来を告げるとされている。鳴力は「1997年陰陽交合事件」ではじめて確認された。当時、鳴力を起こした4組の双子たちはすべて思念化しており、それによって龍脈が保たれたと考えられている。
双子中心では鳴力の発現を日々監視している。鳴力により龍脈の到来が示されたとき、その力を利用しようと目論むからである。

毛刺(モウチー)
陰界のネットワークに激しいノイズが生じる現象のこと。主な原因は邪気の増幅によるもので、『ガリギアスオンライン』内ではしばしば毛刺の発生が確認されている。また毛刺はクーロネットや中国当局のCRBが陰界観測に用いるチャイナグラフにも多大な影響を及ぼす。

陽界
陰界に対して現世の世界を陽界と呼ぶ。陰界と陽界とは交わることなく共存しているが、陽界の中にも陰界へ通じる場所があるとされている。まるで神隠しに遭ったように消えた失踪者は陰界へ落ちたのだと推定される。

老童(ラオトン)
美鈴が完成を目指す気機を稼働させるために備える必要のある石のこと。美鈴と親しいニッキーは、『ガリギアスオンライン』の設定にある聖石、アルツケアンと老童の間に類似性を見出しているようだ。

ラピスアイテール(lapis aethereus)
錬金術で扱われる賢者の石、または万物創世の石を指す。C・G・ユング著作の『錬金術研究』に典拠を求める物質で、『クラテスの書』(9世紀)などを拠り所に、「浄化された雨水に聖別された赤ワインを数滴落とす」ことで、創生の物質、ラピスアイテールが生成されるとしており、可視的かつ霊的な「霊気を生む石」とされ、賢者の石と同一視される。
まれに賢者の石としてラピスと混同されるが同根である。17世紀の錬金術師ブラハルトによる『錬金術教義』にも言及がある。
ヴリル機関ではラピスアイテールこそが万物の創造主の具現であり、満願叶える万有物質として神聖化している。『ガリギアスオンライン』ではアルツケアンとして設定された聖石である。

リストチップ(Liszt chip)
日本で開発されたバイオチップ。日本AR技研所属のリード研究医、方家巧(ほうけたくみ)は、大脳皮質内に生成されるゲレー小体を特定周波数によって安定させると感覚野をコントロールできることに着目。一辺5mm四方のリストチップをうなじにバイオプリントすることで、ヒトの五感すべてを恣意的に操れる技術として研究が進んだ。超低電力ロジック回路を応用して体液の塩分だけでエネルギーをまかなうことができるため永続的な仕様が可能だ。
リストチップの仕様書から「リスト4」の技術情報が漏洩し、神浪(サンロン)によって光明路にもたらされ、陰界では芯片(サンピン)として実用化されるに至った。リストチップの命名はハンガリーの音楽家、リスト・フェレンツに由来する。

リゾーム(rhizome)
竹などの地下茎のこと。表からは伺い知れない地下深くで際限なく根を広げていく。クーロネットやチャイナグラフ、ガリギアスオンライン、それに過去からのレクシコ通信、日本のオムニワールド、ガリギアスオンラインなど、時空を超えたネットワークの接続も増殖するネットワーク「リゾーム」のなせる技である。用語出典はドゥールーズ=ガタリの著作から。

硫化エラストマ
ゴム状の弾性体で、かつては人造人間マノイドの製造に用いられていた。衝撃に強く、蘇生力も高いため、人造素体には適していたが、頭部に格納するヒト思念の扱いが難しく、やがて軟化セラミック製のジーノスに置き換わることになった。

龍脈
風水をなす四神獣、東西南北それぞれに相応する中国の神話上の聖獣、青龍、白虎、朱雀、玄武よりもたらされる気脈のこと。気脈が生じ、流れ合わさる場所こそが四神相応の地として永劫の繁栄を約束されるのである。
龍脈は、陽界、陰界それぞれに存在し、それが途絶えることになれば陰陽のバランスが乱れ陰陽交合を来し、世界は崩壊するとされている。

霊式ヘテロヂン
霊波を電気信号に変換することで実現した通信技術。1935年、昭和10年、日本の陸軍飯倉技術研究所で開発された。通称レ号通信機。開発直後、異なる波長からひとつの波長を生成する技術はヘテロダインと改称されるが、霊式ヘテロヂンだけはそのままの呼称が継続して用いられた。
通信内容は霊波に変換されるため、内容の解読は不可能であり、きわめて高度な暗号通信手段であった。

レクシコ通信機(lexiko)
ヴリル機関が開発した霊界通信技術。霊式ヘテロヂン技術を応用している。霊式ヘテロヂン技術は戦前の日本で実用化され、第二次大戦中にドイツにもたらされて霊界通信機として改良された。
レクシコとはギリシャ語で「辞書」を意味する。第二次大戦後、レクシコ通信機はソ連によって鹵獲され、さらに改良が加えられて冷戦下でワルシャワ条約機構軍加盟国側で広く活用された。

聯盟(レンマン)
光明路電脳中心に集うゲームキッズたちだ。皆、クーロネットの上級ユーザーで甲会員であり、オンラインゲーム『ガリギアスオンライン』でもハイレベルを競う。
裏では密かに双子中心の動向を探っており、そのため覆面姿で顔を隠し、互いに星座にちなんだハンドルネームで呼び合う。決して素性を明かすことはない。

鹿台(ロウタイ)
ガリギアスオンラインの中核サーバの名称。オンラインゲームを通じて、陰界、陽界から多くの思念を収集しているようだ。機械的なサーバではなく、思念バーチャルサーバとして機能している模様だ。その点で世界層的にみると抽象度の高い層に存在していると思われる。用語出典は殷王朝時代の巨大な楼閣の名称から。

路人
陰界の九龍城に暮らす住人を称して路人と呼ぶ。元々は陽界にいた人間で、ヒト思念の再凝縮した存在であると考えられている。陽界から思念表出することなく陰界へ移った路人もいるようだ。
九龍城砦内にひしめく大厦(たいか)と呼ばれる集合住宅は部屋が狭く、一日の殆どを路上で過ごす住人が多いためにこのような呼び方が定着した。

ロットナー検査(Rottner test)
ヒトと人造人間ジーノスとを見分ける検査でベルツ・ロットナー博士が考案した。検査は双子中心の検査室で行われ、無理数や超越数を暗記させられる。繰り返し暗記するうちに、無意識のうちに次々と数字が口をついて出てくるようになるという。
稀にジーノスは鳴力に近い思念を発するため、芯片を改造してジーノスのふりをする路人がいる。そうした場合、ヒトとジーノスを見分ける手段として用いられる。万が一、鳴力思念を発するヒトであった場合、双子中心地下室に幽閉され、より苦痛の多いゲラーマン検査を受けさせられる。ゲラーマン検査はヒトを廃人にすることが多く、それを避けるためにジーノスのふりをする路人が多い。

 

ロッホ(loch)
陽界に存在する陰界へ通じる場所でドイツ語で穴を意味する。1930年代、ドイツ調査隊が日本でロッホ調査を行い、伊豆半島にロッホと思しき穴を発見し、それを塞いだ記録が残されている。もっともドイツ人たちは、ロッホこそが地底世界アガルタへ降りていく場所であると信じており、調査当時、陰界という認識はなかったようだ。日本にはまだ他にもロッホが存在するとも言われている。

 

妄人(ワンニン)
物に執着して邪気に触れた際にその物自体に姿を変えてしまった路人。他の街区と自由な行き来が難しくなった光明路では、扉や鍵穴、マンホールの蓋など、通行に適した場所に由来する妄人が多い。妄人が通行を許可しても神浪でビルが現れるなどした場合は通行できなくなる。

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